「遅れてきた春」 0015
「で、今度はなんだい。」
「ろくな用事じゃないだろう。」
後部座席でケートとエドナは同時に話し始めた。
「今度のブツはなんだい。さっきの路地から出て来たってことは・・・」
「アマティか」
「何でそれを知ってんだ。そうか、じいさんだな。」
男は目をむいた。
「けっけっけ。いったろ<食材>探しだって。食い物になりそうなもん探してんだ。」
「一枚かませろよ。一匹狼じゃ荷が重いぜ。どうせベルンでエージェントに合うんだろ。」
双子は同時にウインクしながらいった。
「そこまで知ってんのか。かなわねぇな。ばーさんたちには。でもな,こいつは一人でやりたいんだ。わけありでな。なんせ20年ぶりでよ.」
「何じゃつまらん。」
「勝手にやるといいさ。どうせわしらの助けが要る。」
双子たちはけっけっと笑いながら言った。
「でもさ、助かったぜ。ベルンへ行く列車の時間忘れててよ。」
「待っててやったんだよ。おまえさんはどっか抜けてるからな。足も用意してな。」
「ところでどこで待ち合わせしてるんだ、ベルンの。」
「Kindlifresserbrunnen」
「時計塔のそばのか。食人鬼噴水とは穏やかじゃないね。」
「いっておくけど、ついてくんなよ。」
男がくぎをさすと双子たちは笑って取り合おうとしない。
「じゃあ、待ち合わせ場所なんて話すんじゃないよ。」
「もう一枚かんじまってるんだ、このまま乗せてきな。」
男は黙ってアクセルを踏んだ。