ある晴れた日。
 蝶々さんは助手席に居た。
 隣にいたのは待ち焦がれた人ではなかったが、気持ちの良い日に、オープンカーに乗るのも悪くない、と気まぐれに思ってみたからだ。 東京タワーが視界に入ってしばらく、蝶々さんは思い付いた。
 あそこに上った方が、きっと早く船は見えるはず。
 「港でなくていいの?」訝しげに応える男に、蝶々さんは行き先の変更を告げた。

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