花の散る頃、ご婦人はやって来た。
 新年のマツユキ草は、物語の中のことだが、一足早い春とその色は愛でるに足るもの。それは、水鳥がリズミカルに餌を啄む様にも似て、ビニール袋を片手に、五弁の残った落花を一つまた一つ、緑色の硝子瓶へ。
 寒が戻って数日、寒々とした曇天のある日のこと。山の手は一等地の広大な空き地、土地に残った寒桜が、今年もふんわりと明るい。

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