*パリフォト便り-2・ノート*

 パリの7月は一年でももっとも明るく陽気な季節のはずだったのですが・・・。

 今年は雨にたたられました。スコットランドあたりにいるはずの低気圧が下りてきてし まったのか。そんな中での、夏を感じさせた数少ない日々。 夏の日の雨は、流れる雲と共にやってきて雲と共に去っていく。にわか雨とはまさにこのこと。そんな雨が夕方に通りすぎたある日のこと。見る見る間に虹の懸橋が浮かび上がってきたのでした。虹は地平線近くから徐々に立ち上がり、だんだん輝くように明るさを増して天空にアーチをかけ、その外側にも、うっすらと陰のように、2つめのアーチを描きました。それは15分ほど続き、日が傾くにつれ静かに消えていきました。そして、周りの空は群青色に変わり、沈みゆく太陽の日が建物の壁をオレンジ色に変えていったのです。

 その2週間後の週末。ようやく夏を感じさせる日が3日ほどありました。この機会を逃してなるか・・と海へ。パリから200キロほどの英国海峡に面したドービル。海外沿いには、ノルマンディ地方独特の、屋根も全体も大きな木造の家屋。これらは超高級ホテル。その間に御殿のようなカジノが並んでいます。夏の終わりには、グランプリとアメリカ映画祭がクライマックスを飾るとか。

 でもなんといっても砂浜がきれいです。長さは3キロほどはあるでしょうか。幅もゆったりしてます。干満の差が大きいため、満潮時で200メートル強、干潮時には1キロを超えそうです。砂浜の手前には、木製の遊歩道に面して更衣室、お店、レストランが並んでますが、波打ち際はそこから遠くの彼方となります。海は、沖が緑青、岸近くは浅瀬の砂の色が透けて見えるいかにも寒そうな海。すぐ向こうはイギリスのはず。しかし、陸地は見えません。

 砂浜の遊歩道に近いところには、ビーチパラソルが整然と並びます。始終冷たい風が吹くここドービルでは、このパラソルに風よけのフードがついているのが特徴です。フードの下端を砂に埋めて使うとテントのようになります。傘の部分とフードのツートンカラーは、白い砂浜と真っ青な空の下に映え、ディック・ブルーナの絵本に出てきそうなシンプルで鮮やかな光景をつくっています。若者達は波打ち際に近い方に陣取り、より内側には家族連れが多く集まります。そして、パラソルの周囲では、あちこちで、トップレスながらもスノッブな雰囲気をぷんぷんと漂わせるマダム達が社交の花を咲かせます。そして、子供にとっては快適な砂遊び場になります。

 さて、5月に春本番を告げたマロニエはその後如何に?・・・なんと、もう葉の先が赤茶てきたものもあります。春には鈴なりに花をつけた無数の房が木を飾っていましたが、実を付けるのはわずかです。一房に1〜2個位ずつ、棘のような出っ張りのある青いいがゴルフボールほどに育っています。もう一月もすると、これが割れて栗のような茶色い実を地面に落とします。そして夏が終わります。

 すべてがゆったりとしか進まないこの時期に、気持ちははやるばかりでなのです。